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なおみ
「はーい。お待たせ」
純二
「じゃ、行こうか」
なおみ
「うん」
良子
「あっ、竹本さん。これ、少ないけど当分の経費」
純二
「そんな事してもらわなくても…」
良子
「でも、主人にも言われてるから、受けてって。足らなくなったらまた言ってね」
純二
「わかりました。お預かりします」
なおみ
「じゃ、お母さん、行ってきます」
良子
「いってらっしゃい」
純二と出かけるなおみは、ニコニコしている。そんな楽しそうななおみを、良子は久しぶりに見た。やはりなおみは、純二と一緒の方が、幸せになると思っていた。
なおみ
「ねぇ、どこに連れてってくれるの?」
純二
「そうだなぁ、じゃぁ俺達が初めて出会ったところ」
なおみ
「うん」
2人は原宿に来た。去年の9月、こずえと一緒に歩いた歩行者天国。マックでランチしていた時、引ったくりに遭い、それを純二が助けた。純二は、その時の模様を再現しようとしていた。平日のためか、歩行者は少なく、車も走っている。
純二
「なおみちゃんは、ここを友達と歩いてたんだ」
マックの前で、実際に座って鞄を置いた。
純二
「ここでランチしてた時、ひったくりが…」
その時、本物のひったくりが、なおみの鞄を本当に奪っていった。
なおみ
「あっ」
純二
「あっ、待てー!」
2人が出会った時と全く同じ光景だった。
なおみ
「あっ…、この感じ…。前にもあった」
もう少しで思い出せそうという時、なおみを頭痛が襲った。
なおみ
「!いたっ!頭が…」
うっすらと純二が犯人を追い掛ける姿が、なおみの目に映った。
なおみ
「た、竹本さ…ん」
なおみは、テーブルの上に俯せになって、気を失っていた。しばらくして、純二がなおみの鞄を取り返し、戻って来てみると、なおみが気絶していた。
純二
「なおみちゃん!どうしたんだ!しっかりしろ」
なおみ
「…あっ、竹本さん。あっ、あれ?私…」
純二
「記憶、戻ったのか?」
なおみ
「…少し」
純二
「どの辺りだ」
なおみ
「初めて会ったときのこと。竹本さんが、犯人を追って行く姿に見覚えがあった」
純二
「そうか。じゃ、次へ行こう」
2度目に会ったのは一係であった。
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