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古い甘味処に入りあんみつを頼む。
「翔夜は食べないの?」
「俺は甘いものダメだからさ、いいよ。」
そう、と言ってあんこを頬張る翁。
「翔夜。」
「ん?」
「あーんしてちょうだい。」
「?あーん。」
言われた通り口を開けば冷たいものがつるんと口に入った。
「ここのあんみつ、本当に美味しいの。だから食べてほしくて…白玉なら甘くないでしょう?」
あぁ…。
本当だ。
白玉なら甘くない。
「白玉も美味しいね。」
「そうでしょう。」
無邪気に笑う翁に白玉を食べつつ常日頃気になっていた事を聞いてみた。
「翁。翁は好きな人がいるかい?」
「いるわ。恋人よ。」
無邪気に笑ったまま翁は答えた。
俺の中を冷たいものが行き来する。
翁の顔を見てみろ。
幸せそうだ。
なら、それでいいじゃないか。
そう自分に言うけれど冷たいものは行き来を止めない。
「そういえば翔夜。わたし、一度も聞いてないわ。」
「何を?」
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