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「翁のためならわがままでも聞くさ。言ってごらんよ。」
翁は俺の近くに来て静かに真っ直ぐな目で俺を見ながら消え入りそうな声で言った。
「あのね…手を繋いでもいいかしら?」
返事として俺は黙って翁の手を握った。
体温の低い手のひらを強く握ると翁は満面の笑顔を見せた。
そして翁は細い手で翁の手を握りかえしてくれた。
その後の帰り道に言葉はなかった。
二人して幸せの余韻に酔いしれていた。
だから寂しくもなんともなかった。
夕陽の中の翁は一段と可愛らしく綺麗だった。
その後も現在進行形で俺たちの恋仲は順調で。
昼休みには翁から俺のクラスに来たりしてくれた。
放課後になれば他愛もない話をして時折、甘味処に寄って帰る。
毎日、翁は同級生がいなくなると照れながら必ず俺に言う言葉がある。
それはあの日の純粋な甘い言葉。
「ね、翔夜。手を繋いでもいいかしら?」
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