昭和

2/7
1262人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
俺らが育った町は大阪や。 御堂筋を南下してくと、潮の匂いがふっと漂う土地がある。 港湾事業が盛んに行われるその地は岸壁に取り囲まれ、塗装が剥げ落ち、各所に錆びが廻った外国船が岸壁にステイしている。 船体には他国の字で船名が記されているけども、多くはアジア船。 甲板に乗船してる外国人船員は貧困そうな風体をしていて、国籍を問わず皆そうゆうふうに見えた。 彼らがそうやったんかどうかは実際は分からんけど、俺達の家庭の大半が『そうやったから』彼らを見下したり、憐れむ気持ちで見たりはせぇへんかったし、できへんかった。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!