第93夜 神無月の神社

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中秋過ぎた秋の夜、神社の傍を通ると鳥居の脇に何かがうずくまっていることがある。 なにせ夜なので遠近がよくわからずどのくらいの大きさなのかわからない。 ネコにしては大きいなと思い近付くと、昔流行ったMA-1を羽織り、黒いジーンズにサンダル履きの男が膝を抱えている。   「おまえ神社の中に入るのか」   と男が尋ねる。   「入りません」   と言うと、そうか、と言ってサングラスをはずして追いかけてくるらしい。   男はものすごい形相で、見ると絶対腰を抜かしてしまうので、逃げるのであれば絶対後ろを振り向いてはいけない。 追いつかれると男と同じ顔にされる。 神社は入り口が2つ以上あるので神社の中に入って裏から抜けられれば逃げられる。   走っている途中、境内で灯りが見えても絶対にその方に寄ってはいけない。 灯りの方に走って逃げると、それは小さな社で、社には窓があり、中は三畳の畳が敷いてあり、その向こうは障子になっている。 障子は10センチ空いていて、人の良さそうなおばあさんが座って横を向いて談笑しているのが見える。 やれ助かったと思って窓をバンバン叩くと、障子の左側がすごい勢いで開いて、白装束で白目の大男が灯りの下をこちらに3歩であるいて来て、すぐにつかまってしまう。   神無月の神社には気をつけよう。   そういう話。
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