第94夜 魚

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別の世界へのドアを持っている人は、確かにいると思う。 日常の隣で、そういう人が息づいているのを僕らは大抵知らずに生きているし、生きていける。 しかしふとしたことで、そんな人に触れたときに、いつもの日常はあっけなく変貌していく。   僕にとって、その日常の隣のドアを開けてくれる人は二人いた。 それだけのことだったのだろう。   大学一回生のころ、地元系のネット掲示板のオカルトフォーラムに出入りしていた。 そこで知り合った人々は、いわば、なんちゃってオカルトマニアであり、高校までの僕ならば素直に関心していただろうけど、大学に入って早々に、師匠と仰ぐべき強烈な人物に会ってしまっていたので、物足りない部分があった。   しかし、降霊実験などを好んでやっている黒魔術系のフリークたちに混じって遊んでいると、1人興味深い人物に出会った。   「京介」というハンドルネームの女性で、年齢は僕より2、3歳上だったと思う。
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