さよならは言わないで

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「あんたの身内じゃないのか? やけに早いが…」 小太郎は、近付いてくるヘッドライトに目を向けた。 「いや、いくら何でも早すぎる。それに一台というのも妙だ」 「…というと、迷子かな。俺達のような」 二人が話していると、車は小太郎達の前で止まった。 真っ赤なフェラーリだったが、ボディは傷だらけで車体も汚れていた。 窓が開き、不機嫌極まりない表情の若い女性が顔を出す。 「車の中からで失礼。ちょっと道を尋ねたいのだけど」 神経が太いのだろうか? 放置された複数のパトカーを見ても眉一つ動かさない。 「先輩、他に聞き方というものがあるんじゃ…」 助手席に座った若い男が諫める。 それが女性の怒りに火を付けた。 男の頬をつねり上げる。 「じゃあ、あんたが土下座して教えてもらいなさい。そもそも道に迷った責任の半分はあんたにあるのよ」 「先輩が近道って言ったんじゃ…」 「口答えするな!」 男に並々ならぬ情を感じた小太郎は、女性を宥めた。 「ま、まぁまぁ落ちついて。この先の道から国道に出られるはずだ」 「はず? 随分と曖昧な表現ね」 「せ、先輩、教えてもらってその態度は…」 「うるさい!」 男には気の毒だが、小太郎としても他に説明のしようがなかった。
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