635人が本棚に入れています
本棚に追加
/216ページ
「あんたの身内じゃないのか? やけに早いが…」
小太郎は、近付いてくるヘッドライトに目を向けた。
「いや、いくら何でも早すぎる。それに一台というのも妙だ」
「…というと、迷子かな。俺達のような」
二人が話していると、車は小太郎達の前で止まった。
真っ赤なフェラーリだったが、ボディは傷だらけで車体も汚れていた。
窓が開き、不機嫌極まりない表情の若い女性が顔を出す。
「車の中からで失礼。ちょっと道を尋ねたいのだけど」
神経が太いのだろうか?
放置された複数のパトカーを見ても眉一つ動かさない。
「先輩、他に聞き方というものがあるんじゃ…」
助手席に座った若い男が諫める。
それが女性の怒りに火を付けた。
男の頬をつねり上げる。
「じゃあ、あんたが土下座して教えてもらいなさい。そもそも道に迷った責任の半分はあんたにあるのよ」
「先輩が近道って言ったんじゃ…」
「口答えするな!」
男に並々ならぬ情を感じた小太郎は、女性を宥めた。
「ま、まぁまぁ落ちついて。この先の道から国道に出られるはずだ」
「はず? 随分と曖昧な表現ね」
「せ、先輩、教えてもらってその態度は…」
「うるさい!」
男には気の毒だが、小太郎としても他に説明のしようがなかった。
最初のコメントを投稿しよう!