疫病神と呼ばないで

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  「タチの悪い冗談だ」 小太郎が軽く笑った。 しかし美郷は笑う気になれず、肩を竦めた。 その様子に、警官が笑って続けた。 「大丈夫。遺体は死後数日は経っているし、犯人も遠くに逃げているだろう」 「聞いたか、美郷?」 「うん…」 能天気な小太郎とは裏腹に、美郷の不安は消えることはなかった。 「…あの慰霊碑は?」 美郷は再び、慰霊碑を見た。 不安の源が慰霊碑にあると感じたからだ。 「あぁ…あれはね…」 警官の顔から笑みが消えた。 慰霊碑を見つめる。 小太郎も思わず慰霊碑を見た。 「このダムは『いわくつき』でね。俗にいう『心霊スポット』と呼ばれる場所なんだ」 警官が低い声で話し始めた。 ダム建設は地元住民…佐土原村民の反対を押し切って敢行された。 佐土原村民は工事の妨害を繰り返していたが、ある事件をきっかけに妨害がなくなった。 その事件というのが、佐土原村村長の自殺だ。 工事を行う作業員達の目の前で、自らの首を切り、命を断ったという。 『先祖代々受け継いだ地を簡単には手放さぬ。お前達にも相応の犠牲を払ってもらうぞ』 村長の最後の言葉は、切断された首が発したという。
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