疫病神と呼ばないで

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  「そんなんじゃ…」 美郷もはっきり見たわけではない。 『見た』と断言はできない。 しかし、一瞬見えた『あれ』は人の顔のように思えた。 それが、光に驚き、茂みの中に隠れたように見えた。 「パトカーが待ってるぞ。早く車出せ」 「う…うん…」 美郷はゆっくりとアクセルを踏んだ。 ダムに沿った道を、パトカーの先導で走っていく。 美郷の後ろにもパトカーが付いていた。 「これで一安心だな。誰かさんのせいで、とんだ寄り道をしたもんだ」 「私のせいじゃないもん」 「お前が高速降りたからだろ」 「しょうがないでしょ。お兄ちゃんが無職なんだから」 「…それは関係ないだろ」 パトカーのウインカーが煌めき、側道に入ることを指し示していた。 「ほら、曲がるぞ」 「分かってるわよ」 美郷も後に続く。 車は再び、舗装されていない悪路を走ることになった。 「またかよ…」 小太郎が心底嫌そうな顔をする。 「文句ばっかり言わないの、無職のくせに」 「お前…やけに突っ掛かってくるな。そんなに俺が嫌いか?」
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