疫病神と呼ばないで

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  小太郎がふて腐れてみせる。 「いい年した『おっさん』が何やってんの?」 「お、おっさん!? 今のは聞き捨てならんぞ!」 「無職でニートでプー太郎…揚句、おっさんでハゲでデブなんて救いようがないよ」 「ちょっと待て! おっさんはまだいい、人の価値観の問題だからな。だがな、ハゲとデブは違うだろ」 「なるかもしれないじゃん」 「『かもしれない』で断言するな。今ので俺の間違ったイメージが定着したらどーすんだ」 「知らなーい」 美郷の顔に笑顔が戻った。 小太郎の顔にも笑みが浮かんだ。 しかし、それも一瞬で消えた。 「ば、馬鹿! 前見ろ!」 小太郎の声に、慌ててブレーキを踏む美郷。 前を行くパトカーに追突する寸前で、車は停まった。 「な…何だよ、一体…」 ボンネットに激突するのをシートベルトに助けられたのだが、鎖骨に食い込んだ恩人を乱暴に外し、小太郎が舌打ちをした。 目の前にはパトカーのブレーキランプが赤く点灯していた。 「何かあったのかな?」 「分からない。ちょっと見てくる」 小太郎は車を降りて、パトカーに駆け寄った。
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