637人が本棚に入れています
本棚に追加
小太郎がふて腐れてみせる。
「いい年した『おっさん』が何やってんの?」
「お、おっさん!? 今のは聞き捨てならんぞ!」
「無職でニートでプー太郎…揚句、おっさんでハゲでデブなんて救いようがないよ」
「ちょっと待て! おっさんはまだいい、人の価値観の問題だからな。だがな、ハゲとデブは違うだろ」
「なるかもしれないじゃん」
「『かもしれない』で断言するな。今ので俺の間違ったイメージが定着したらどーすんだ」
「知らなーい」
美郷の顔に笑顔が戻った。
小太郎の顔にも笑みが浮かんだ。
しかし、それも一瞬で消えた。
「ば、馬鹿! 前見ろ!」
小太郎の声に、慌ててブレーキを踏む美郷。
前を行くパトカーに追突する寸前で、車は停まった。
「な…何だよ、一体…」
ボンネットに激突するのをシートベルトに助けられたのだが、鎖骨に食い込んだ恩人を乱暴に外し、小太郎が舌打ちをした。
目の前にはパトカーのブレーキランプが赤く点灯していた。
「何かあったのかな?」
「分からない。ちょっと見てくる」
小太郎は車を降りて、パトカーに駆け寄った。
最初のコメントを投稿しよう!