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「ちょっとー、何かあったんですかぁ?」
小太郎がパトカーの窓を叩く。
「パンクしたみたいなんです」
「パンク?」
小太郎はタイヤに目をやった。
確かに、右側の前輪が潰れている。
「すぐにスペアに替えますんで、ちょっと待っててください」
「手伝いましょうか?」
「いや、大丈夫です」
小太郎は車に戻ると、不安げな美郷に状況を説明した。
「これだけの悪路だからな。パンクもするだろ」
パトカーを追い抜いていけるほど、道幅は広くない。
小太郎達は、パトカーのタイヤ交換を待たざるを得なかった。
日は完全に沈み、周囲は闇に包まれている。
月の光が弱々しく辺りを照らしているが、それがより一層、不気味さを醸し出していた。
「…まだかな?」
美郷は、早くこの場所から立ち去りたかった。
薄れてきていた不安や恐怖が、再び形を成していく。
「…ちょっと時間がかかりすぎじゃない?」
「そうか?」
そうは言ったものの、小太郎もそれは感じていた。
タイヤ交換にしては時間がかかり過ぎだ。
それに、警官の姿も見えない気がする。
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