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小太郎はカマをかけたわけだが、警官はまんまと引っ掛かった。
「タイヤに切り裂かれた跡がある。まさか…殺人鬼が潜んでるってこと、ないよね?」
小太郎の言葉に、警官の顔色が青ざめる。
「まさか…」
「だよね~。そんなホラー映画みたいな展開、あるわけないよね~」
「そ、そうですよ、やだな、怖いこと言わないでくださいよ」
「とにかく! 早くここから立ち去りたい。悪いけどパトカーを退かすの手伝ってくれ」
近くにある茂みなら木もなく、パトカーを押し込めそうだった。
警官も頷く。
「この道をしばらく進むと、門があります。赤い錆び付いた古い門です。それを出て、山を降りると国道…」
「あんたは来ないのか?」
「流石に放置しては行けませんから」
「ここで待つのか? 一人で!?」
「同僚もいますから大丈夫です。それにもうすぐ埼玉の鑑識が来ますよ」
小太郎は後ろに停まっているパトカーを見た。
窓から不安そうな警官が顔を出して、こちらの様子を窺っている。
…頼りになるとは思えん。
小太郎は純粋にそう思った。
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