疫病神と呼ばないで

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  パトカーを押し込み、何とか車が一台通れるだけのスペースを確保できた。 車に乗り込んだ小太郎を、不安げな美郷が迎える。 「何があったの?」 「警官が消えた。もしかしたらトイレにでも行ってるのかもしれないが…」 「長くない?」 「紙がないのかもしれないな」 小太郎は、タイヤの裂け目の事には触れなかった。 「後ろのパトカーは残るらしいよ。道を聞いてきたから、大丈夫だろ」 「う…うん…」 美郷は兄の言葉に頷いた。 しかし、兄が『何か』を隠しているのは感じ取っていた。 「道なりに進めばいい。簡単だろ?」 美郷は静かにアクセルを踏み込んだ。 残った警官が敬礼をして見送る。 「大丈夫かな、あの人」 「警官だろ? 訓練もしてるだろうし、拳銃も持ってる。熊が出ても大丈夫さ」 小太郎が笑ってみせた。 「そんなの気にしてないで前を見てろよ。パンクなんてシャレにならんからな」 小太郎はそう言ったが、あのタイヤを考えると、注意など無意味なように思えた。
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