疫病神と呼ばないで

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  車のヘッドライトが何かを捉えた。 茂みの中、曲がりくねった道の先だ。 その正体が何か分かった時、小太郎と美郷は言葉を失った。 「そ…そんな…」 「何で…パトカーがいるんだ? これ、さっきの車だろ?」 『群馬県警』と書かれた二台のパトカーだ。 一台が道を塞ぐように停まっており、もう一台は茂みの中にあった。 先刻まで一緒にいたパトカーに間違いない。 「やっぱり、おかしいよ。何で前にいるの?」 「落ち着け。もしかしたら同じようなトラブルに巻き込まれた奴がいるのかもしれない」 「何言ってるの!? そんなこと信じられる!?」 「もしかしたら、だよ。可能性はゼロじゃないだろ?」 「お兄ちゃんがそんなのだから、こんな状況になるのよ!」 「俺か? 俺のせいなのか?」 「お兄ちゃんが無職でニートでプー太郎だからだよ…おまけにハゲでデブだし…」 美郷がハンドルに顔を伏せた。 今にも泣き出しそうに、声が震えている。 小太郎も、反論する気を無くしていた。
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