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「よ、よし…整理してみよう」
小太郎が震える声で言った。
「分岐を間違えたか?」
「ずっと一本道だったよ」
「そうだよな…そうだよ。一本道だった。でもな、実は見逃してたりするんじゃないのか?」
「車が通れるような道を見落とすわけないよ」
「じゃ…じゃあ…」
「ねぇ! それよりも、何で誰もいないの? 残ったお巡りさんは?」
「と、トイレじゃないか?」
「何言ってるの!?」
美郷が声を荒げた。
小太郎も考えがまとまらなかった。
目の前の現実が受け入れられない。
「ちょっとクラクション鳴らしてみろ」
「う、うん…」
美郷は、短くクラクションを鳴らしてみた。
「…」
「…」
「反応ないな」
「ないね」
小太郎は車のドアを開けた。
「ちょっと見てくる。美郷は車から出るんじゃないぞ」
美郷が頷くのを確認して、小太郎はドアを閉めた。
警戒するように、ゆっくりとパトカーに近付いていく。
無人のパトカーはエンジンがかけられたままだった。
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