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「お~い…」
パトカーの中を覗き込む小太郎。
パトカーの中はもぬけの殻で、誰もいなかった。
「どこに行ったんだ?」
周囲を見回してみる。
道の両脇は、鬱蒼とした茂みがあるだけだ。
茂みに違和感を覚え、近付いてみる小太郎。
…ここだけ茂みが薙ぎ倒されているな。
何者かが、ここを通ったようだ。
倒れた草木の方向から、道側から中に入り込んだように思える。
…待てよ。
わざわざ草木を押し倒して、中に入る必要があるのか?
仮に、中に入る必要があったとして、普通は避けて通るだろ。
自分の考えに寒気がして、小太郎は車に戻った。
「ね…ねぇ、どうだった?」
「何もなかった。警官もいなかった」
「どういうこと?」
「分からない」
小太郎はそう答えたが、察しはついていた。
考えたくはないが、何者かが警官をさらったのだ。
「ちょっと考えがあるんだが…」
小太郎は少し考えて口を開いた。
「…何?」
「ダムに戻ってみないか? 埼玉県警がまだいるはずだろ?」
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