637人が本棚に入れています
本棚に追加
美郷は小太郎の提案を否定する理由がなかった。
『戻る』という行為は消極的で、美郷の性格には合っていなかったが、異常な事態に積極的も消極的もなかった。
どちらが正解かも分からない。
「Uターンできるか?」
小太郎の問い掛けに頷く美郷。
茂みに頭を突っ込めば、方向転換ぐらいはできそうだ。
車は無傷では済まないだろうが…。
「この際、傷がどうとか俺が無職だとかは問題ではない。この危機をどう脱するかが問題なのだ」
「危機を脱した後に、重くのしかかってくるけどね」
「………」
車を反転させ、来た道を戻る。
「考えたくはないけど…」
美郷が言いかけるのを、小太郎が制した。
「分かってる。また、この場所に戻ってきたら…だろ?」
「うん…」
「それはそれで構わない。とりあえず『異常事態』が確定するからな。今は俺達がマヌケなのか、事態がマヌケなのか分からない状態だ。まず、それをはっきりさせよう」
「どっちがいいのかな?」
「さぁな。どちらにしても課題は山積みだ」
最初のコメントを投稿しよう!