疫病神と呼ばないで

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  美郷は小太郎の提案を否定する理由がなかった。 『戻る』という行為は消極的で、美郷の性格には合っていなかったが、異常な事態に積極的も消極的もなかった。 どちらが正解かも分からない。 「Uターンできるか?」 小太郎の問い掛けに頷く美郷。 茂みに頭を突っ込めば、方向転換ぐらいはできそうだ。 車は無傷では済まないだろうが…。 「この際、傷がどうとか俺が無職だとかは問題ではない。この危機をどう脱するかが問題なのだ」 「危機を脱した後に、重くのしかかってくるけどね」 「………」 車を反転させ、来た道を戻る。 「考えたくはないけど…」 美郷が言いかけるのを、小太郎が制した。 「分かってる。また、この場所に戻ってきたら…だろ?」 「うん…」 「それはそれで構わない。とりあえず『異常事態』が確定するからな。今は俺達がマヌケなのか、事態がマヌケなのか分からない状態だ。まず、それをはっきりさせよう」 「どっちがいいのかな?」 「さぁな。どちらにしても課題は山積みだ」
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