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揺れる車の中、小太郎は幾つかの仮説を立てていた。
…というより、何とか筋の通った理由を見つけようとしていた。
同じ場所に出たということは、大きく円を描いて進んだことになる。
自分達が認識できないほどの大きな円だ。
そうすると、上った分下り、下った分上ることになる。
「そんな感じはなかったけどな…」
速度と時間で距離を計算することができるが、小太郎は考えるのを止めた。
車の揺れが治まったからだ。
「お兄ちゃん、ダムに戻ったよ!」
「よし、でかした!」
そうは言ったものの、どちらが良かったのかは小太郎にも分からなかった。
「異常事態確定だな」
ここまでの道に分岐はなかった。
小太郎も美郷も、それは注意深く見ていたから間違いはない。
つまり『進めば戻る』、『戻れば戻る』という不可解な現象が起こったわけだ。
「良かったな。とりあえず、俺達はマヌケじゃなさそうだぞ」
「だからって喜ぶ気にはなれないよ」
美郷は視線を走らせ、埼玉県警のパトカーを探した。
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