疫病神と呼ばないで

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  「この際だから小太郎じゃなくてプー太郎に改名すれば?」 美郷の痛烈な嫌味に、小太郎は返す言葉がなかった。 六本木小太郎 二九歳。 妹の美郷が言うように、現在は無職。 以前は中堅クラスの企業で働いていたのだが、同じ毎日の繰り返しに人格が崩壊(本人談)しそうになり退職した。 新たに仕事を探すわけでもなく、今は失業保険を使い、気ままに『自由生活』を送っている。 小太郎曰く『時代がまだ俺を必要としていない』そうだ。 妹の美郷は二四歳になる。 兄の主張や論理など知ったことではない。 しかし、無職でニートでプー太郎の兄に常識を説くのは、自分の責務だと思っていた。 それは幼い頃からの習慣で、事故で他界した両親に代わって、美郷に課せられた使命と言っていい。 美郷曰く『私に彼氏ができないのはお兄ちゃんのせい』なのだ。 「どっかでUターンした方がいいだろ。戻って高速に乗ろう」 小太郎は周囲を見渡した。 道の両端は木々が生い茂っている。 どう考えても一般道とは思えなかった。 流石に、美郷も兄の提案に頷かざるを得なかった。
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