637人が本棚に入れています
本棚に追加
「この際だから小太郎じゃなくてプー太郎に改名すれば?」
美郷の痛烈な嫌味に、小太郎は返す言葉がなかった。
六本木小太郎 二九歳。
妹の美郷が言うように、現在は無職。
以前は中堅クラスの企業で働いていたのだが、同じ毎日の繰り返しに人格が崩壊(本人談)しそうになり退職した。
新たに仕事を探すわけでもなく、今は失業保険を使い、気ままに『自由生活』を送っている。
小太郎曰く『時代がまだ俺を必要としていない』そうだ。
妹の美郷は二四歳になる。
兄の主張や論理など知ったことではない。
しかし、無職でニートでプー太郎の兄に常識を説くのは、自分の責務だと思っていた。
それは幼い頃からの習慣で、事故で他界した両親に代わって、美郷に課せられた使命と言っていい。
美郷曰く『私に彼氏ができないのはお兄ちゃんのせい』なのだ。
「どっかでUターンした方がいいだろ。戻って高速に乗ろう」
小太郎は周囲を見渡した。
道の両端は木々が生い茂っている。
どう考えても一般道とは思えなかった。
流石に、美郷も兄の提案に頷かざるを得なかった。
最初のコメントを投稿しよう!