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湖に沿った道を走る。
大きな水門があった。
そこに『佐土原ダム』と書かれた石碑がある。
「…ダムだったのか」
小太郎が呟く。
ダムに目をやると、透明度の高くない濁った水面が夕日に反射していた。
「お兄ちゃん、何かヤバい雰囲気だよ」
パトカーに近付くにつれて、尋常ではない様子が分かってきた。
パトカーが五、六台、道を封鎖するように停まっている。
そして、小太郎達の車に気付いた数人の警官が、慌ただしく動き始めた。
道を塞ぎ、車を停めるように促す。
「ちょっとちょっと! あんたら何処から入ったの!」
「あの…えっと…」
警官の迫力に、しどろもどろになる美郷。
それを庇うように、小太郎が事の成り行きを説明した。
それを聞いた警官達が顔を見合わせる。
「あんたら、あの峠を越えてきたのか?」
呆れたように警官が肩を落とす。
「でも、あの道は封鎖されているはずだぞ。門を越えてきたのか?」
「そんな門はありませんでしたけど…」
美郷が首を傾げる。
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