疫病神と呼ばないで

6/32
前へ
/216ページ
次へ
  湖に沿った道を走る。 大きな水門があった。 そこに『佐土原ダム』と書かれた石碑がある。 「…ダムだったのか」 小太郎が呟く。 ダムに目をやると、透明度の高くない濁った水面が夕日に反射していた。 「お兄ちゃん、何かヤバい雰囲気だよ」 パトカーに近付くにつれて、尋常ではない様子が分かってきた。 パトカーが五、六台、道を封鎖するように停まっている。 そして、小太郎達の車に気付いた数人の警官が、慌ただしく動き始めた。 道を塞ぎ、車を停めるように促す。 「ちょっとちょっと! あんたら何処から入ったの!」 「あの…えっと…」 警官の迫力に、しどろもどろになる美郷。 それを庇うように、小太郎が事の成り行きを説明した。 それを聞いた警官達が顔を見合わせる。 「あんたら、あの峠を越えてきたのか?」 呆れたように警官が肩を落とす。 「でも、あの道は封鎖されているはずだぞ。門を越えてきたのか?」 「そんな門はありませんでしたけど…」 美郷が首を傾げる。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

637人が本棚に入れています
本棚に追加