637人が本棚に入れています
本棚に追加
「で…何が起きたんです?」
美郷が物々しい雰囲気を感じて、口を開いた。
「ああ…殺人事件だよ」
お上の事情はともかく、その下で働く者達にとっては厄介な出来事が起きた。
佐土原ダムの岸辺で、殺人と思われる死体が発見されたのだ。
問題となるのが管轄となる警察で、土地の持つ曖昧さが、二つの県警の鉢合わせを生んだのだった。
「死体が上がったのが、群馬県か埼玉県かで上が揉めててな。おかげで鑑識もまだ来やしない。俺達は現場を封鎖して、指示を待ってるんだよ」
「そうですか…大変ですね」
美郷は警官達の苦労を察したが、小太郎は舌打ちをした。
「とんだ現場に出くわしたもんだ」
「ちょっと、お兄ちゃん!」
「いや、いいんだ。あんた達には申し訳ないと思う。悪いが協力してくれないか?」
警官の態度に、小太郎は言い過ぎたと感じ、口をつぐんだ。
「名前と住所、電話番号を教えてくれ。あと勤務先も」
『勤務先』という言葉が出て、小太郎は肩を落とした。
最初のコメントを投稿しよう!