時の過ぎゆくままに

10/35
前へ
/35ページ
次へ
やっとの思いでソファー席に座る事が出来た二人は、腰を下ろした途端に一緒になって大きな溜息をついてしまい、顔を見合わせて大声で笑った。 「はは、今日はだいぶ歩いたからねぇ」 男は屈託のない笑顔を見せてそう言った。 「ええ、でも・・可笑しいわ」 女は笑いを堪えながら応える。 夕暮れ時。 日が沈みきる間際の窓から見える風景は、地平線を夕焼けに紅く染め上げ、西日が二人を優しく照らし出していた。 「それにしても素晴らしい風景ねぇ、よくいらっしゃるんですか?」 女は風景を眺めながら、話を切り替えし、タバコに火をつけている男にそう言って尋ねた。 「ええ、まぁ、仕事絡みが多いですよ」 男は当たり障りなく答える。 「本当に?私にはそうは見えないんですけどっ」 女は皮肉たっぷりの口調で笑顔をつくり、男を冷やかした。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加