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「え、ええ、知っているわ。ハンフリー・ボガードとイングリット・バーグマンの・・」
女は困惑しながらも答える。
「そうそう、その名画に登場したカクテルが、シャンパンカクテルなんだ」
「え・・そうだったかしら・・」
女は眉間にしわを寄せ、記憶を辿るようにして考え込んだ。
「ほら、ボガードの名台詞」
「あ!思い出したわ。確か・・」
「そう」
「君の瞳に乾杯!」
二人は声を揃えてその名台詞を口にすると、声を大にして笑い飛ばした。
「お待たせしました、シャンパンカクテルです」
ホールスタッフが話しに割って入り、二人を戒めるかのように黙々とグラスを二人の前に置いた。
二人は目を合わせ、戯けた顔をして肩をすぼめる。
「では、失礼致します、ごゆっくりと」
ホールスタッフは皮肉ともとれる表情で、微笑みながら軽く一礼をすると、その場を去っていった。
「はは、少しはしゃぎすぎたね」
男は苦笑を浮かべてそう言った。
「仕方ないわ、だって楽しいんだもの」
女は開き直った様子で微笑んでいる。
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