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「これ・・いいわね、美味しい・・」
女はグラスを持ったまま笑みを浮かべ、男に感想を述べた。
「本当に?それはよかった。このカクテルはね、ゆっくりとビターズが染み込んだ角砂糖が溶けてゆくから、飲んでいく内に甘味と、苦味が増すんだよ」
男は微笑みながら、グラスをテーブルに置くと、タバコに火をつけ、簡単に講釈をした。
「ええ、わかるわ」
女は相槌を打ちながら笑顔を見せ、グラスをテーブルに置くと、革張りのケースからタバコを取り出し、火をつけた。
窓の外の風景は装いを変え、空は藍に染まり、薄暗くなって、地平線もぼやけて見え始め、港町の灯りが目立ち始めていた。
ラウンジ内は照明が調節され、薄暗くなり、ジャズバンドの生演奏がリズミカルに幕を開け、聴衆が拍手で迎え入れる。
「お、始まったね」
男はジャズバンドの方へ目を向けると、一緒になって小さく拍手をした。
女も同じ様にしてジャズバンドへと目を向ける。
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