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「はは、似てる似てる」
「それで、あのピアニスト・・何ていう人だったかしら・・」
「ドーリー・ウイルソン」
「そう!ドーリー・ウイルソンが演奏を始めるのよね」
「うん、名場面だったね、あのシーンは」
「ええ、すごく印象に残っているもの」
二人は名画の話に花を咲かせ、シャンパンカクテルを勢いよく飲み干すと、お代わりを注文し、暫し As Time Goes By に耳を傾け、黙り込んだ。
ラウンジ内は一体となり、静まり返る。
そして落ち着き澄ました時間が続く中、誰かが注文したのだろう、ホールスタッフが銀トレイに花火のデコレーションを添えたトロピカルカクテルを乗せ、二人の前を通り過ぎた。
「あ、花火・・」
女は沈黙を破り、反射的に口を開いた。
花火のデコレーションはパチパチと音をたて、夏らしい、スカイブルーに染まったトロピカルカクテルをより一層、華やかに演出している。
「綺麗ねぇ・・」
女は目を潤ませて花火を見送った。
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