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「花火、好きなの?」
男は花火のデコレーションに見入っている女に、そう言って尋ねた。
「ええ、好きよ。儚い美しさっていうのかな、そこに魅力を感じるわ」
「儚い?」
「うん、花火って、綺麗でいられる時間がすごく短いでしょ?何か、女の一生と重なって見えちゃって」
女は少し照れくさそうに笑顔を見せ、男にそう答えた。
「おお、語るねぇ」
男は少しからかい気味に、話を茶化す。
「もう、馬鹿にして」
「はは、ごめん、ごめん。でも、本当に好きなんだね、花火が」
「ええ、だからこのくらいの時期は花火の催しが楽しみでしょうがないの」
女は童心に返ったかのように屈託のない笑顔を見せた。
「お待たせ致しました、シャンパンカクテルでございます」
注文したシャンパンカクテルがテーブルに置かれ、ホールスタッフを見送ると、二人はおもむろにグラスを手に取り、シャンパンカクテルを口に含んだ。
「花火といえばさ、この街の打ち上げ花火、もうじきだね」
男は口に含んだシャンパンカクテルを飲み込むと、話を元に戻した。
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