時の過ぎゆくままに

4/35
前へ
/35ページ
次へ
ある大手企業が主催するゴルフコンペ―。 交流会を主旨としたこのゴルフコンペは、様々な企業の代表者が集まり、年に一度行われる。 いわば主催者側の感謝祭ともいえる社交の場で、当時主催者側企業の役員秘書として在籍していた女は、役員のお供としてコンペに参加しており、子会社の代表者として参加していた男とは、この時が初めての顔合わせで、一緒にコースを回った事がきっかけで知り合った。 特に際立った特徴のない平凡な男。 容姿に魅力があるわけでもない、仕事もそれ程とはいえないだろう、今のポストも唯一の処世術である“人間性”によって勝ち得たものといえる。 女はコースを回りながら、いつもの癖である打算的な思いで男を見ていたが、自分でも不思議なくらい、時間を追う毎にその屈託のない笑顔、人間性に惹かれていき、いつしか男の左手の薬指に光る指輪を、陰鬱な思いで見つめるようになっていった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加