時の過ぎゆくままに

そしてコース後の会食の席。意外にも誘いを掛けてきたのは男のほうであった。

その日のコースで、女は調子を合わせてにぎったのはいいが、大幅に負け越しており、男は女の負け越し分を帳消しにする条件として、自分に付き合わせることを要求してきたのだ。

女に拒む理由は何もなく、二つ返事でそれに応じ、男と共に会食の席を抜け出した。

そして車を走らせること数十分、地上７０階建ての超高層タワーの地下へと男は車を滑らせた。

９３年に開業したこの超高層タワーは、港町の新都心開発の一環として大手企業グループによって建設され、オフィス、ホテル、ショッピングモールなど、多目的に活用できる要素を含み、港町のシンボルとして名声を博していた。

地上２９６Ｍ。
国内一の高さを誇るそのタワーの外観は、近代的でスタイリッシュなつくりをしており、近未来の風景を連想させる。