時の過ぎゆくままに

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・・・男は・・まだ姿を現さない・・・ もう・・連絡をよこすのもおっくうなのかもしれない・・・ 女はタバコを消し、ラウンジ内に目を向け、軽く手を挙げてホールスタッフに合図をした。 別の客のワインサービスを終えたばかりのホールスタッフは女に気付くと、笑顔で一つ頷き、バーコートのポケットにソムリエナイフを手早く仕舞い、客に軽く一礼をすると、小走りに女のもとへと駆けつけた。 「お待たせ致しました、どうぞ」 「同じものを頂けるかしら」 女は飲み終えたグラスをホールスタッフに向けて少し差し出し、注文を済ませた。 「承知しました、シャンパンカクテルですね」 「ええ、お願いします」 女は口元で笑顔をつくり、ホールスタッフを見送ると、おもむろにジャズバンドの方へと目を向けた。
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