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白いサマータキシードに黒い蝶ネクタイという出で立ちで聴衆を魅了するジャズバンドの面々は、ピアノ、ウッドベース、クラリネット、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックス、トロンボーン、トランペット、ギター、ドラム等で編成されていた。
ピーク時の時間帯という事もあってか、比較的アップテンポの曲が流れていたが、誰かがリクエストしたのだろうか、曲目はセロニアスモンクの名曲、“Round Midnight” へと移り、ラウンジ内は様子が一変した。
ピアノのソロ。
スローな曲調だが、一つ一つの音階がフォルテシモとなって奏でられ、ラウンジ内に強く響き渡り、聴き入っているものたちの心を打つ。
賞賛せざるを得ないほどの、滑らかなピアノの演奏。
ラウンジ内は暫くの間しっとりと静まり返り、客たちは美しいピアノの旋律に耳を傾けた。
女は同じ様にして曲に聴き入り、ぼんやりと眺めていたが、先程のホールスタッフがシルバートレイにシャンパンカクテルを乗せ、こちらに向っている様子を見て窺った女は、少し姿勢を正して待った。
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