朝カレ/夜カレ

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まだ多くの人々が寝静まっている。 始発だってまだまだ先。 そんな時に私達は別れる。 「あ……起きてたの……。」 私は眠い目を擦りながら、彼を見る。 「うん。もういかないと行けないからさ。」 「そだね……あたしも…出る。」 「……今から亨のとこ行くの?」 「うん。ご飯作んなきゃいけないし。」 「俺も愛瑠の作ったご飯食べたいんだけど。」 「じゃあ今度、おいしいディナー作ってあげる。」 壮斗は微笑んで、私にキスをした。 「頑張ってね。」 「愛瑠も気をつけて。」 あたしも笑って壮斗に手を振った。 壮斗が歩く方向とは反対方向にまだ暗い夜道をひたすら30分ほど歩く。 ただ真っすぐに。 駅と駅1本分の夜道を私は何も考えずに歩く。 そうすると次の駅が見えてくる。 人もいない、明かりもついてない駅に煙草の炎だけが見えてくる。 黒のスーツに黒の髪。 煙草がとっても様になっている。 「亨。お待たせ。」 「あぁ……。」 そういうと亨はあたしにキスをする。 亨とのキスはいつも煙草の味がする。 亨の近くはいつもこの匂いでいっぱいだ。 いつしかこの煙草の匂いは私を安心させるようになっていた。 「ねぇ……いっつも疑問に思ってたんだけど……なんでいっつも会ったらすぐにキスするの?」 「え?……だってさっきまで壮斗と会ってたんだろ?」 「うん。」 「今は俺のものだからって印。」 というとまたキスをした。 今日の亨は……甘すぎぎる。 私は自分の顔が真っ赤になるのがわかった。 「今日も疲れたんじゃない?」 私は照れ隠しにそういってみた。 「まぁな……。最近連勤続いてっし。」 「早く寝た方がいいよ。」 「おまえとの時間くらい余裕だし。おまえが帰ってからちゃんと寝るから。」 亨があたしの頭をぐしゃぐしゃに撫でる。 「うん……」 私達は手をつないで亨の家まで歩いた。
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