朝カレ/夜カレ

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時の流れはとても早くて、気付けば壮斗といたり、亨といたり……。 私に家という物はない。 勝手にそう思ってる。 まぁ単純にいえば、家を捨ててきたんだけど。 中学卒業と同時に家を出たのだ。 だから高校にはいってない。 家を出てから、私はすぐに仕事と家を探した。 だけどそう簡単にうまくはいかなくて、毎日仕事探しに明け暮れた。 ましてや16歳の身元不明の少女となれば雇うわけもなかった。 また、住所も保証人もいないから、家を借りれもしなかった。 お金はたくさん持っていたからホテル泊まりはしてたけど、半年もたてば底をついた。 そんなとき私を助けてくれたのは亨だった。 とにかく疲れていた私は、夜の繁華街に向かった。 未成年でも雇ってくれる悪徳企業はいくらでもあるだろうって思ってた。 でも実は私にはここから後の記憶がない。 気付いたときは病院のベットにいたのだ。 「ん………」 目をあけたと同時に視界に入ってくる白い天井に違和感を感じた。 自分の手には点滴がされていた。 呆然とその状態を見た後、私はすぐに逃げなくてはと思った。 家庭環境について問い詰められて、家に連絡されようものなら…… ヤバイ……私はとっさに 荷物と服を抱え、バレないように、急いで部屋を出たのだった。 病院のパジャマはばれてしまうから、トイレで着替えて出た瞬間だった。 トイレの前には知らない男の人が息を切らして私を睨み付けていた。 黒いスーツに黒いコート。 明らかに怪しい。 だけど美しいというか、麗しいというか……オーラがあった。 「何してんだよ……」 男は咳込みながら私に言った。 「なんでもない……」 訳がわからない返事をして、私はそそくさと歩いた。 その時だった。 「いっいやぁ~っ何すんの!」 私は思わず大声をあげてしまった。 その男が私を担ぎあげたのだった。 「おろしてっちょっとどこ触ってんの!」 私はその男を叩くが、びくともしない。 男は笑って言った。
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