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その日から、僕の、闘病生活が始まった。
抗がん剤の副作用。
吐き気、眩暈、痙攣、脱毛…。
僕はいつ襲われるか知らない恐怖に堪えた。
自分の病気が、治ると信じて。
それはとてつもなく過酷で、家族に迷惑を掛けている気がして、いたたまれなかった。
***
数ヶ月して、検査を行った。
僕のガンは消えていた。
僕は報われた。ガンに勝ったんだ。
復帰した僕は、直ぐさま勉強に励んだ。
数ヶ月の入院のせいで、授業についていけない。
悔しかった。
友達に追い抜かれていく自分が。
多少の無理をしてでも、時間を取り戻さなくては。そんな衝動に駆られていた。
だから、母さんの優しさが、鬱陶しくてたまらなくなった。
″東大に受かって、物理を勉強したい。″
その思いは、高まる一方だった。
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