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そして電車の窓の向こう側に彼女の姿が見えた。
精一杯電車と並ぶけど…そのまま電車はスピードを上げてゆっくり離れていった。
「また…会おうなーーー!!」
離れていく君に見えるように、僕は泣きながら大きく手を振った。
君にこの声は届いただろうか、この手はちゃんと見えただろうか。
わからないけど…僕は電車が見えなくなるまでずっと手を振っていた。
町はすっかり朝になってたくさんの人が歩いている。
さっきの静けさが嘘のように…。
泣いてたんだよねさっき…ドアの向こう側で、顔見なくても分かるよ…声が震えてたから…
そう言って僕はまだ少し赤い目のまま、彼女のことを笑ってやった。
「会えるよ…きっといつかまたどこかで…」
ぎぃーぎぃー…錆び付く車輪は寂しげに悲鳴を上げて一人になった僕を運んでいく。
─Fin─
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