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「いや、どうせ休みなら、俺は登山より家事がしたいかな」
「だーめ!」
あっさりと断られる。
ジークの家事に対するワーカホリックっぷりは、常軌を逸している。
本業である巨人退治も疎かにするほどである。
しかし、ロキといいジークといい、勇者神が趣味に熱中し過ぎて本業を忘れてはいけないんじゃないか──と桐斗は思っていた。
「で、でもでも! ほら、俺がいない間に巨人が現れたら大変だろ? だから家でゆっくり休めば……」
『心配するな、ジーク。もし、現れてもお前が来るまでは持ちこたえてみせる』
『だから安心して登山してこいよ!』
桐斗のアースブレスからスナイパーフレイとトールランナーの声が響く。
「……と、みんなも言ってるけど?」
「はぁ、分かったよ。ここは大人しく登山しておいた方が身のためだねぇ……」
ジークはため息をつきながら、登山を容認する。
「良かったよ。もし、ジーク兄ちゃんが断り続けてたら、僕……冷静でいられなくなってたかもしれないし」
その時、心なしか桐斗の笑みがすこぶる黒く見えるジークであった。
(桐斗君、黒いっ!)
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