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「というわけで、ちょっと離れた山まで登山しに来たんだけど……」
登山スタイルに着替えたジークは白い霧が立ち込める森の中を一人歩いていた。
「うーん……。どうやら、迷ったみたいだねぇ」
いつも通りの調子で笑いながら呟くジーク。
全然笑い事じゃない。
「でも、困ったね。みんなに通信しようにも霧のせいか全く繋がらないし。取り敢えず、ファングは呼べるかな?」
ジークは考えなしにエッダホルンを持つ構えをするが、その手にホルンは無かった。
「…………エッダホルン、家に忘れちゃった」
落胆するジーク。
所持しているのは僅かな携帯食料とペットボトルの水に、いざというときの簡易コンロにロープ……と本当に登山に来ているのか分からないサバイバルグッズをバッグに詰め込んできていた。
ジークにとっての登山とはサバイバルなのだろうか?
「まぁ、これなら何とか今夜は持ちこたえれそうだね」
ここでの持ちこたえれそうとは家事をしないことによる禁断症状のことを指す。
ジークなら見事にサバイバルでいつまでも生きていそうな気はする。
「ただ、寝具がないのは困るかな。このままじゃ風邪をひきかねないし」
本当にこの神様は遭難と言う言葉を知らなそうだ。
しかし、そんな彼の眼前に仄かな灯りが映る。
「ん? 何だあれは? 家の……灯り?」
ジークはその灯りに導かれるまま森の中を歩いていく。
しかし、普段から注意力はしっかりしていたジークだったが、その背後に立っている巨大な影にはどうやら気づけなかったようだ。
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