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それを聞いていると俺はやがてさっきまでの後悔が吹き飛び、心の底から笑いが沸き上がってきた。
「「ハハハハハハ!」」
やがて俺は背中の上坂と同じくらい笑ってしまった。
さっきまでの自分が滑稽で笑った、でもそれだけじゃない、と俺は思った。
上坂はこの姿になって初めて、笑ったのだ。
「おかしい」
「全くだな」
「でも、な、なに今の台詞!ハハハッ!」
「う、うるさいな。笑い過ぎだ」
しばらく、上坂は小さくなる毒キノコではなく、笑い死にする毒キノコを食べたように笑いが止まらなかった。
笑われて凄く、恥ずかしかったが、それ以上に彼女の笑い声を久しぶりに聞いたような気がして……
素直に嬉しかったのだ。だから俺は笑った。
俺も久しぶりに爽快に。
上坂はそれからしばらく、ずっと笑っていた。
ショルダーバックを肩から下ろし、見るとさっきまでの暗く閉ざしていた顔が嘘のような、いつもの上坂友里恵がいた。
そんな姿を見て、俺は今度は冷静に思った、やっぱり上坂は笑ってた方がかわいいなぁと。
今度は口に出したら笑われそうだから、先ほどと同じ台詞を代わりに心の中で言って決心した。
ようやく笑い終わった上坂は、笑い過ぎて、目に涙を溜めながらいった。
「ハハハ……久しぶりにあんなに笑ったよ」
「くっ……そんなに滑稽だったのかよ」
「へへへ……」
今度は微笑んだ顔で言う。
「期待しているよ」
「……期待しないでくれ」
「あれ~?さっきの発言は嘘だったの?」
嘘じゃない、本当に。と敢えて口に出さずに心の中で俺は言った。
それが俺たちの長く短い奇想天外な日常が始まりだった……。
なんてこの章の終わりをキザな台詞でまとめてみる。
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