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ここで察しのいい方はなぜ俺が校舎という用語を用いたかを不思議に思ってくれると幸いだ。
校舎ということで別に毎回毎回図ったように同じクラスになるとか、同じ部活に所属している、とかそういう漫画的な運命の悪戯なんかは無かった。
まぁ、何度かはあることは否定できない
そんなこんなで今、俺は大学のキャンパスをブラリとなんの宛もなく、気分きままに歩いていた。
まぁ実際は大講義室で行われる憲法の授業に向かっているのだ。
ちなみに俺はこの大学の経済学部に所属し、そこら辺のDQNのように誰かに出席を頼んで、深夜徘徊や飲み屋を渡り歩くような廃れた生活とは無縁なまともな大学生活を送っていた。
まぁだからと言って糞真面目な生活ではない、ただそんな堕落なことをするくらいなら、学校内でいつ愛しのあの娘に会えるかを期待する方がよっぽど身体的にもいいと思うからだ。
ちなみに俺が中、高と皆勤賞を貰ったのは、確実にそれが理由である。
逆に言えば、もし失恋なんてしたらもう、引きこもりニートになるのが目に見えている。
そんな時、携帯の着信音が鳴った。
相手は大学で知り合った友達、北嶺謙介(きたみね けんすけ)からだった。
『春哉、次の授業の出席頼めないか?』
「えーお前、またどっかに遊びに行くのかよ……バイトもしないで親の金でどこそこに何の利益もない遊びをしにいくのは親不孝の極みだと思うんだけど?」
『あぁ、まぁバイト仲間に誘われてさ、仲間付き合い悪いとバイトやりにくくなるからな』
「あーなるほどね、わかったお前の学籍番号と名前は出席調査用紙に記入しておくよ」
『悪いな』
それを聞くと俺は携帯電話の通話終了ボタンを親指で押した。
今の会話でわかったと思うが謙介は馬鹿である。
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