第一章 溺れ者

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─大学─ 大学にてつまらない授業は話し半分に聞く。 「こんなこと社会に出たって役立たないのに…」 まぁ時代も時代。高学歴がうまい飯を食える。そんな世の中だからこそ大学に進学したのだ。まぁ就職先は決まっているようなもんだが。 講義が終わり体を伸ばす。そこに横から女性の声が入る。 「真面目に勉強しなさいよ。」 少し微笑みながら言う。 俺はどう答えればいいか言葉が詰まり口ごもる。ソイツはまったく面識のない人物であった。細い眼鏡を掛けた凛々しい感じでそれといってかわいくもなければ美人でもない普通の娘だった。私服姿から相手の趣味嗜好は大体わかるが俺にはファッションセンスなんてない。この服装がどんなキャラクターに見えるかわからない。それはさておき… 何か返さなくては。テンパった俺が返した言葉は 「めんどくさい…」 なんて無愛想だ。「女性には優しく」「子供は手がうな」どこからともなく俺の頭の中から俺ルールが出てきた。 「そう?勉強って子供の頃は嫌いだったけど大人になってから重要だ!て思って勉強嫌いが無くなったけど」 「そうだな。後悔先に立たずってやつだ。けど俺、英語と数学苦手なんだ」 「今の科学なんだけど?」 「………。」 見ず知らずの男になぜそんなに絡む?忘れていたので聞いてみる 「ところで何で俺に話しかけたんだ?」 「単に友達がほしかったんだ。私、高木唯。君は?」 「山田太郎」 「?本当?」 「おいおい、マジに捕らえないでくれ。鳴雷(なるかみ)だ」 「鳴雷君、友達になってくれる?」 パキンッ 何か割れる音がしたがただの雑音だろう。 「他を当たってくれ。話し相手ぐらいにはなってやるがね」 何故か名前を聞くと一瞬で、こいつとは一生相容れない。そう思った。が、持ち前の八方美人が出てしまった。これからどうしよう?話し相手なんかになりたくない。「3年だけど友達一人もいないのか?」 「うん、友達のいないこの東京に上京してから、皆声かけずらくて、今回は勇気だしてみた」 よりにもよって俺に的を決めなくてもいいのに…
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