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「ヒトっちゅー生き物はなぁ、弱くも強くもあるけったいな生き物なんよ。“愛情”っちゅうもんがあるからしゃーないんかねぇ」
高く頭をあげ背筋をしゃんとして立つ女性は明るい草原に座る多くの子供たちに微笑んで言った。
「でも、それがあるから私ら妖精もヒトに惹かれるんやろなぁ」
木漏れ日が溢れる午後の授業だった。深い声音を操り、さまざまな緑に輝く芝生に姿勢よく座る白い髪の女性。
ゆったりとは言い難い口調の中には、長く生きた生物だけが持つ、まるで透明度の高い川の底に存在するような影がある。
彼女はソーシアの生ける伝説、
マダム・ヴァレッサ。
妖精界において幸せの種をヒトに与える妖精制度『ソーシア』の生みの親と呼ばれる人物だ。
「あんたたちは、これから多くのヒトと出会うんや。摩訶不思議な生き物、それがヒトや。あんたたちはそれをよおく感じなあかん」
せやから、と彼女は続けた。
「今から私の話をよく聞きなはれ」
まんまるく見開いた緑の瞳を輝かせて子供たちはじっと彼女を見つめた。
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