第1章 『blue mallow』

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 涼子が死んだ。  遺族の方からはっきりと聞いたわけではないが、自殺したということだった。  そういうウワサは、誰からともなく伝わってくるものだ。  都会のど真ん中とはいえ、町単位は閉鎖的なものである。  だが、自殺の原因は誰も知らなかった。  遺書があったようで、自殺であることに間違いないらしいのだが、その内容は涼子の両親と警察しか知らない。  いくら葵が俗に言う「幼なじみ」であったとしても、こんな葬儀の場でそれを聞けるはずもなかった。  第一、「幼なじみ」なんてものは、得てして昔から親同士の交流が盛んだったというだけで、本人同士の親密度に比例しないものだ。  実家が近所で保育園から専門学校まで同じだったけれど、「親友」とはとても呼べるものではなかったし、また呼びたくもなかった。  ただ、そう広くもない交友関係の中で、共通の友人が多くいたことは確かなので、学校やそれ以外でも、友人が何人か集まれば顔を合わせることも少なくなかった。
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