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チョウは空に浮いているのでしょうか。
はたまた風に飛ばされているのでしょうか。
目の前をとおりゆく七色の羽を見て、少年は何の気なしに思いました。
ぱたぱたと。ふらふらと。
あまりにその飛び方はあぶなっかしく、つい少年のほほもゆるみます。
緑の森に囲われた、広い広い、どこまでも見晴らしのいい草原。
きのうからの雨はひるに止み、せの高い木のてっぺんから、さやさやとした赤い光の帯がふってきます。それを受けたつゆが、まるでよろこんでいるように、草と花を、つやつや、笑わせて。
茶色のくせっ毛とうすい空色のシャツを泳がせる風は新芽のかおりをのせており、少年はくすぐったそうに顔を動かして、前がみをはらいました。
くれなずむ夕やけ空のなか、草の海のまんなかに建つ木造りの家へと帰る道。
両手で大事そうに抱えるにもつを気にしながらも、少年は、どうかあのチョウがおいしいミツのもとへとたどりつけるように、とねがわずにはいられません。
はたしてそのねがいが叶うころ、少年もちょうど自分の家へとたどりつき、木ごしらえのとびらを肩で開けました。
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