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なんかこう……怨々と恨み節を吐きながら暗い部屋で魔導文字や円形を戦っていた昔の俺アアアアアアア思い出したくないっ。
犯人に微妙な親近感を覚えつつ身悶えていると、河川敷の草むらで硬いものを踏んづけた。
「おお、残された物的証拠を発見」
夢見がちなことを呟いて拾い上げてみると、残念。普通にガラクタっぽかった。よく見るとゴミが結構落ちてるのだからセイの寸評も存外馬鹿にならない。清掃に関してエリオンはもっとマメだからな。
あーあ、まだまだ使えそうなもんまで。
「爪きり、じゃねえしな」
似たものをシャムの部屋で見たことがある。若干形が違うような気もするけど。何にせよ、まだ錆びていないし、いろいろ用途はありそうなのでポケットにしまっといた。貧乏性ここに極めり。
道草が過ぎたらしい。
「クローン!」
既に橋の下に到着していたセイに大声で呼ばれてしまった。
「早くこんかー!」
わりわり。
軽く手を振ってから、歩くのを再開する。
季節外れな幽霊のもとまで。
★ ★ ★
――彼女が警団の中に混じって事件現場にいたので悲鳴をあげかける。
セイやルゾッツと同様に、メンバーで最も遅れてきた俺の参上を見守っている。
俺の足は、止まった。
「…………、」
栗色の髪、濃い色を宿す柔和な瞳、セイと似て病弱そうな体付き。
見た感じの年齢はいいとこセイ以上ハル未満。
にも関わらず、目が合った段階で強制的に異常事態であることを察知させられた。
犯人は俺の全身。たとえ頭が忘れかかっていても身体の奥底にすっかり刻み込まれているようだった。
しかし、決定的に矛盾しているので早々に少女を見離す。アホらし。
「魔術陣…………それか?」
崩れた支柱に青い塗料の文様が辛うじて残されてる。
魔術陣とは異世界に繋がる《道》だ。それを大地と水平に保つってのも大昔に流行ったやり方だな。
ちゃんとした内容を確かめる前に女性陣二人が同時に口を開いた。
「おい、クロンッ」
「……クロン?」
あーもー!
これはマジで困る。一瞬どちらに反応するべきか思考がワヤになった。
より自己主張が強かったのはセイの方である。
「陣を見ろ! 冗談で済まんぞっ」
駆け寄ってくると俺の手を握り、魔術陣のまん前まで連行されてしまった。セイはセイでなんだっつうんだ。落ち着け。俺の頭よ落ち着きたまへ。
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