不可視ライオン

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それはひっそりと そして緩やかに存在した 確かな存在感は そこには無い 誰かに紹介でもされなければ 気付かないような 場末のBAR しかしその重たいドアを 一つ潜れば 男はそこに居る いつだってそこに居る タバコの煙を充満させて。 くたびれたシャツに 黒いジーンズ しかし足元はベルルッティという あまりにもバランスの悪い容姿に 似ても似つかないが カウンターの向こう側に居る 長髪のくしゃくしゃ頭の男が 一応のバーテンダー という事らしい 店内は薄暗く とりあえずのカールスバーグの 照明が申し訳なさそうに 一縷の光を宿している しかし正面には 一段高く設計された お立ち台とも言うべき ドラムセットとアンプの集合体 店内の照明の殆どを ここに集約させたと言わんばかりに そのステージは 一段と目を引く作りになっていた 店に入るや否や カウンターの男は小さく いらっしゃい、と とりあえずの仕事をする。 カウンターに座って 客は気を使って 生ビールを頼んだ。 「悪いね。うちは日本のものは 置いてないんだ。ビールも 外国のそれだけど、良いかい?」 客はそれでも良いと答えた ビールの最後の一口の余韻を 楽しんでいる時
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