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まるで補給鑑のような巨大な体躯(たいく)の搬送鑑に包まれ、三機のAAが出撃の時を静かに待ち続けている。
戦闘の直中(ただなか)にありながら、悠長(ゆうちょう)にも鑑に備え付けられた、彼以外に誰もいないカフェテリアでのんびりとハーブティーを嗜(たしな)む男がいた。
先程述べた搬送鑑にいるあたり、AAに関係する何者かである事は疑いなく、胸に輝く階級章はその地位が小尉である事を明らかにしている。
尉官であるにも関わらず、長く伸びて目すら隠れてしまった髪の毛は、更なる自己主張を求めて荒れ狂い、その表情を伺い知る事は出来ない。
鼻筋や口元にある無精髭(ぶしょうひげ)から、歳は20代半ばか、それ以前といった様子だ。軍人らしく鍛え上げられているためか、怠惰な生活はそこから見えないが、少なくとも2、3日は鏡を見ていないのだろう。
「ロン小尉!」
不意にカフェテリアの入り口から声が響いた。
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