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それを確認すると、早苗はベッドの横に座って凛の手を握った。
「ねぇ、凛くん」
「なに?」
早苗は優しく笑って言った。
「凛くんはね、退院したらうちで暮らすのよ」
早苗の言葉に、さやかは息をのむ。
そうすることはすでに大人たちが決め、さやかも異存はないことだが、凜はどう思うだろうか。
いつか話さねばならないことだが、この日話すとは聞いていない。
聞いていれば、それとなく一緒に暮らすことを凜がどう思うか聞けたのに。
凜も突然すぎて困惑しないだろうか。
しかし、隆志がそんな心配をするさやかの肩を叩いて言った。
「おばさんに任せよう。お前1人が頑張らなくたっていいんだから」
早苗はその様子を見て言った。
「さやか、ちゃんと話さなくちゃいけないことよ。それに、これは大人の仕事。お母さんが話すわ」
「……うん」
早苗はさやかが頷いたのを確認すると、凛に視線を戻した。
「凛くん、お父さんとお母さんのことはわかってる?」
その言葉に凛は涙を堪えた表情で黙って頷いた。
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