望まれた命

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「……頑張ったって?」 さやかが尋ねると早苗がふぅっと一息はいて言った。 「わたしたちがあなたたちの結婚に反対してた時、凛が何をしたか覚えてる?」 「……うん。わたしたちを応援してくれたのは凛だけだったよね」 雄介が真剣な表情で頷いた。 「あの時、隆志はもう長くないってわかっていたからね。わざわざ結婚しなくてもと思ったし、何よりさやちゃんに申し訳ないと思っていたよ」 「でも凛は『どっちにしても辛い思いをするなら後悔のない方がいい』って言ったな」 茂が雄介の言葉を引き継ぐように言った。 「今考えれば、凛が正しかったわね。……目の前で両親を失ったからかしらね。凛は命に敏感で、死の先の未来を1番見ていた」 早苗は目を閉じて、辛いことを思い出して悲しげな表情をした。
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