大きな右手

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「叔父さんたちが亡くなって、凜は心を閉ざした。それから絵を通じて笑ってくれるようになった。 退院して一緒に暮らすようになって、この間お父さんを『お父さん』、お母さんを『お母さん』って呼んだの」 「へぇ……おじさんたち喜んだだろう?」 さやかは笑って頷いた。 しかし次の瞬間、寂しそうな表情になった。 「凜が元気になってすごく嬉しい。でもね、絵のことに気付いたのは隆志。一緒に遊んでて1番楽しそうにしてるのも隆志。 ……わたしは凜のために何が出来てたんだろうって思っちゃって」 さやかはそこまで言ってため息をついた。 隆志はそんなさやかに向かってキッパリと言った。 「さやかってさ、頭いいくせにバカだよな」 さやかは隆志の言葉に苦笑した。 「……そうだね。凜に何もしてあげられなかった」
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