手紙

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凜の言葉に、さやかは涙が零れそうになった。 しかし、そっと人差し指で目を拭って、自分に涙を流すことを許さなかった。 「……そうだね。でも美月をちゃんと育てなきゃいけないし、凜もいてくれるから大丈夫だよ」 さやかはそう言ってニッコリ笑った。 しかし凜は悔しそうに下唇を噛んだ。 そしてポケットに入れていた封筒をさやかに渡した。 さやかは何も書かれていないシンプルな封筒を受け取ってキョトンとした。 「これは?」 凜はそっと目を閉じ、さやかに見えないようにテーブルの下で拳を握った。 「……隆志さんから姉ちゃんに手紙。自分が死んでから1年たったら姉ちゃんに渡してくれって頼まれてたんだ」
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