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「ごめん……ね……、ごめん……なさい……」
謝りながら泣き続けるさやかを、凜は優しく抱きしめた。
「いつでも、いくらでも、泣きたい時に泣きたいだけ泣いたらいいよ。
俺は姉ちゃんのそばにいるし、ハンカチの代わりくらいいくらでもするからさ」
凜の言葉にさやかは何度も頷き、隆志の名前を呼び続けて泣いた。
しばらくすると、さやかはいつの間にか泣き疲れて眠っていた。
凜はさやかを起こさないようにそっと部屋に運んでからベランダに出た。
そして手に持っていた缶ビールを空けて一口飲んだ。
「手紙を読んで、姉ちゃんやっと泣いてくれたよ。やっぱりすごいね、『隆志兄ちゃん』は」
凜は嬉しそうに空を見上げて缶ビールを飲んだ。
凜が見上げた空には
地上を見下ろすように
満月が浮かんでいた。
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